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小説執筆に映画作り。iPadを用いて行う“生徒が主役”の国語授業 

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佐藤優馬 教諭

名古屋経済大学市邨中学校・高等学校国語科教諭。愛知教育大学を卒業後、2021年に名古屋経済大学市邨中学校・高等学校に国語科の教員として入職。eスポーツ部の顧問も務める教員4年目。Apple Distinguished Educator 2023。

Apple Distinguished Educator(ADE)…Appleが認定する教育分野のイノベーター。世界45カ国で2000人以上のADEが、Appleのテクノロジーを活用しながら教育現場の最前線で活躍している。

学びの対象が変わっても、活用できる技能を身につけてほしい

2023年9月、全国で21世紀型教育に取り組む私立高校8校が地域を超えて「High School Consortium」を立ち上げた。21世紀型教育とは、偏差値重視の教育ではなく、予測困難なVUCA時代において、社会で活躍できる人材の育成を目指し、非認知スキルの育成やICTを活用した学習の個別最適化、また社会に開かれた教育を実践するというもの。

Consortiumに加盟している私立高校8校のうちの1つが、愛知県名古屋市に校舎を構える名古屋経済大学市邨中学校・高等学校だ。同校は今年で創立118年目を迎える歴史ある私立の中高一貫校として、地域の教育をリードしてきた。2016年より学校改革の一環として全校生徒へのiPadの導入を決定し、2018年には中学・高校の全コース・全学年への導入を実現。

一部の授業だけでiPadを活用するのではなく、「文房具としてのiPad」を掲げ、全授業でフル活用している。同校で高校3年生のアカデミックコースを担当する国語科の佐藤優馬教諭に、iPadを使った授業実践について話を聞いた。

「高校2年生の文学国語で、1年間の集大成として『あなたの今に影響を与えた人生のターニングポイント』をテーマに、『人生の小説家』プロジェクトを行いました。導入では、そもそも小説とは何か?という問いをもとに、自分たちなりの『いい小説』を共有し合い、定義する中で、このプロジェクトにおける評価ルーブリックを生徒それぞれが作成しました。そして、これまで文学作品を読み解く中で学習してきた視点・比喩・リズム・象徴などの技能を用いて、小説を執筆し、最終的に出来上がった作品を『Apple Books』で出版しました。

高校2年生の文学国語で行った「人生の小説家」プロジェクト。これまでの学びを活かし、生徒たちは自身のターニングポイントをテーマに執筆、出版した。

私の授業デザインの軸は、『身につけるべき技能×制作・創造』です。学びの対象が変わっても、たとえ教科や学校を離れたとしても活用できる技能を身につけてほしい。その技能を用いて、今の生徒にしかできない制作や創造をしてほしい。そこから生まれる協働や振り返り、オリジナリティへの価値づけにこそ意義があると思いますし、それによって自己肯定感を育まれるのではないかと考えました」

先生が何を教えるかより、“生徒自身が何を学ぶか”

同校ではICT教育だけでなく、「TeachingからLearining」を4つの教育の柱の1つに掲げ、“先生から何を教えられるか”より、“生徒自身が何を学ぶか”を重要視している。学びの主役は、常に生徒という視点に立ち、授業をデザインする先生たちの姿が目に浮かぶ。

佐藤教諭の国語で習得を目指す技能に、制作などの創造活動を掛け算する授業デザインもまさにそれだ。「人生の小説家」プロジェクトだけでなく、文学読み解きツールを意識した映画作りに取り組んだり、国語の中で多くの高校生が苦手意識を持つ、古典の助動詞を覚える単元では、古典助動詞の擬人化に挑戦した。

古典の助動詞を覚える単元で、古典助動詞の擬人化に挑戦。各助動詞の用法や特徴をキャラクターの性格や外見に反映させ、キャラクターを制作。解説文とともに「Padlet」で共有し合ったという。

「古典の助動詞は、『意味』『活用』『接続』を覚える必要があります。どうしても覚えるのが難しく、古典に苦手意識を持つきっかけになってしまうという生徒たちの声を受けて考えたのがこの授業です。各助動詞の用法や特徴をキャラクターの性格や外見に反映させるという、キャラクターを創造するプロセスを通じて、助動詞に対する学びを深めてもらいました。キャラクターは解説文と合わせて、オンライン掲示板アプリ『Padlet』で提出してもらい、全体で共有しました」

文法学習に対する新しいアプローチなど、今でこそ授業デザインを進化させ続けている佐藤教諭だが、入職当時はICT教育に対する理解を深めるため、周りの先生の真似からICT活用を始めたそうだ。そんな佐藤教諭に転機が訪れる。

「入職して1年目は、国語の授業を問わず学内のいろんな先生の授業を見に行って、いいと思う実践はひたすら真似をしていました。でも1年目の秋に、学内の教員による研修がありまして、その教員に『あなたから市邨高校という所属や肩書きを取ったときに何が残るの?』と言われて。そのときに、もっと教育という世界で活躍できるような教員にならなければいけないと思いました。

そこからは外部の研修に積極的に参加し、真似をする幅を広げていくことを意識しました。その中でADEの先生たちと出会い、ベテランの先生方がまだまだ未熟な私に対して『どんな授業しているの?』『それいいね! 真似するわ』と、熱心に話を聞いてくださったのです。こんな世界があるんだということに驚いたと同時に、私もADEになりたいと思うようになっていきました」

文化祭で線香花火をしたいと提案してきた生徒たち。当初は火を扱うということで学校からはNGが出ていたが、どうすれば安全に線香花火ができるかをPagesにまとめ、再度学校に提案し実現にこぎつけた。

学年が違っても学び合えるし、お互い得るものがある

2023年にADEの認定を受けた佐藤教諭。生徒の成長や変化を佐藤教諭以上に喜んでくれるADEという同志の存在は、温かくも、刺激し合えるいい関係だという。最近ではほかのADEとのコラボ授業も増えているそうだ。

ほかのADEとのコラボレーション授業も積極的に企画している。ここでは、東京都立あきる野学園の菱真衣教諭のクラスと交流した。

「私立小学校とのコラボもありましたね。高校生たちが小学生のプレゼンの素晴らしさに驚いていました。学年が違っても学び合えるし、お互い得るものがあるということを学ばせてもらいました」

外部とのつながりも増え、佐藤教諭の実践の幅は広がり、深まっている。生徒たちからも、「先生の授業は、国語っぽくない。国語を学んでいる以上に、自分を知ることにつながっている」と言われることが増えているという。今後さらに国語科という教科の枠を超えた学びが佐藤教諭の教室から生まれていきそうだ。

7月12日には高校生によるピッチコンテスト「ICHIMURA Launch Pad」を開催。「興味を広げ、世界とつながる」をテーマに活動を行ってきた探究学習の成果を発表した。

※この記事は『Mac Fan』2024年9月号に掲載されたものです。

著者プロフィール

三原菜央

1984年岐阜県出身。 大学卒業後、8年間専門学校・大学の教員をしながら学校広報に携わる。 その後ベンチャー企業を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。 「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる『先生の学校』を、2016年9月に立ち上げた。

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